Vitale Barberis Canonico
ヴィターレ・バルべリス・カノニコ
ヴィターレ・バルべリス・カノニコ。日本ではカノニコと言う呼称で親しまれています。日本でも最もポピュラーなミルですが、皆様どんなイメージをお持ちですか。実は今世界で最も勢いと実力のあるミルと言っても過言では無いのですが、日本ではメジャーすぎて真の姿が知られていないカノニコ。その知られざる一面をご紹介していきたいと思います。
カノニコの歴史
カノニコはイタリア最古のミルの一つと言われており、何と1663年には既に毛織物の生産をしていたと言う記録が残っています。その後も常に革新的な当主のもと、産業革命による機械化等時代の波に上手く乗り規模を拡大していきます。1936年、当時の当主ヴィターレ・バルべリス・カノニコの名を取って、現在の社名となりました。そして創業から350年以上が経過した今もバルべリス・カノニコ家の子孫である13代目、アレッサンドロとフランチェスコ、ルチアの三人が経営をしています。当然200年以上創業者のファミリーによって経営されている企業のみが加盟できるエノキアン・クラブの会員であり、同じくエノキアン協会の「とらや」の展覧会に協賛した事もあります。
カノニコの物づくり
日本ではリーズナブルにして安定感のある生地を生産している中堅ミルと言う印象が定着していますが、それはカノニコの一部分しか捉えられていません。VBC(カノニコ)の強みは、オーストラリアの自社提携牧場での原毛の買い付けに始まり、染色→撚糸→製織→仕上げと言う生地生産に関わる全てを自社で一括して行えるところにあります。それにより日本で現在定着しているリーズナブルでベーシックな生地も織れる一方で、一流のテーラーを唸らせる高級な生地も織っています。またDRAPERSをはじめ、一流マーチャントのスペシャルなリクエストも、カノニコの高い技術力によって支えられています。
既にご存知の方も多いかも知れませんが、ここで改めて今までのカノニコのイメージとは違うカノニコの生地をご紹介していきましょう。まずはカノニコの高級生地というと「REVENGEリベンジ」を紹介しない訳にはいきません。本物のSuper150'sウールを経緯双糸で使い、しっかりとした打ち込みで織られたリベンジは、細番手ならではの光沢と滑らかさがありつつ、驚く程復元製に富み、仕立て映えします。良い原毛を調達して一貫生産できるカノニコならではの生地と言えるでしょう。
また、カノニコというとペレニアルなどオールシーズンの優等生的なスーツ生地を織っているイメージが強いと思いますが、トレンドともなっている英国テイストのビンテージ調の生地も素晴らしい出来です。代表的なのは「SUPER BIOスーパービオ(スペルビオ)」。こちらは21ミクロンという極太の原毛を用いて織られた生地で、ビンテージファブリックと見紛うばかりの雰囲気があります。ざっくりとした風合いとスモーキーな色合いでありながら、しなやかさやドレープ感も兼ね備えた名作です。もっとマニアックな生地も織っています。「6PLYシックスプライ」というコレクションは通常1本(単糸)か2本(双糸)の糸で織られる生地が一般的なところ、6本の糸(6子と言いましょうか)を撚り合わせた、スーツ生地としては超ヘビーウェイトにして、タフな素材で雰囲気抜群です。でも決して硬くは無く、気持ち良い程の弾力性があり、ヘビーな雰囲気と軽快な着心地を両立しているところがカノニコの凄さです。
イタリアから日本に生地を仕入れているお取引先による話だと、イタリア本国ではカノニコはイタリアを代表する一流ファブリックブランドの一つという認識に対して、日本ではカノニコ=ミドルレンジのお手頃ブランドと言うイメージが定着してしまい、そのギャップがなかなか埋まらないとの事でした。しかし上述した様なカノニコが真価を発揮した生地が認知されるにつれ、これまでのカノニコのイメージは近いうちに払拭されるでしょう。
革新性
カノニコはさすが生地業界のリーディングカンパニーならではの新しい取り組みを次々と行っています。特にグローブトロッターやガレージ・イタリアなど、これまでミルとのこコラボなど考えられなかったブランドとの意外なコラボが興味深く、格好良いです。今までどちらかというと縁の下の力持ちだったキャラクターから表舞台へと躍り出て、ミルの地位を引き上げています。これらの仕掛け人、クリエイティブディレクターのフランチェスコがまた雰囲気抜群で格好良いのです。伝統のある生地メーカーの御曹司というと貴族的な雰囲気の方が多いですが、フランチェスコはわざと擦り切れたシャツを愛用したりして、茶目っ気のある肩の力の抜けた着こなしがとってもチャーミングです。そして英国で教育を受けている事もあり、彼の英国への愛が着こなしにも生地作りにも強く影響しています。彼の存在がカノニコの現在のブランドイメージを牽引しているのは疑う余地がありません。
織っている生地も革新的です。ストレッチにして撥水の「Super Sonicスーパーソニック」、染色していない羊の毛そのものの色を活かしたウール(アンダイドウール)で織ったサステナブルな「HOPEホープ」等、技術力と企画力のあるトップミルだからこそのバリエーションの豊富さと柔軟性。これからもカノニコのコレクションが業界のメインストリームを作っていく事でしょう。
コストパフォーマンス
カノニコの生地を語る上でこの要素は外せません。前述した通り日本で最もポピュラーなカノニコですから、日本の主だった生地商社はことごとくカノニコの生地を買い付けています。弊店の様なオーダーサロンにしても、それだけリーズナブルかつスピーディーにカノニコの生地を仕入れる事ができます。ちなみにカノニコの生地生産量はずば抜けており、現在は年間なんと800万メートル(スーツの着数にすると270万着!)という途方もない量の上質な生地を世界中に供給し続けています。この圧倒的な生産量もコスパの良さの要因の一つと言えるでしょう。
ザ・ドレッシング・ラボのスーツ採寸サンプルはカノニコのベストセラー「PERENNIALペレニアル」で仕立てております。型崩れせずシワにならず、そして見栄えが良く、私の頼れるフィッティングの相棒です。質実剛健にしてあらゆるニーズに応えるヴィターレ・バルべリス・カノニコの生地はお選び頂いて外れる事は決してありません。ぜひドレッシングラボの生地の良さを最大限に引き出す仕立てで、カノニコの350年来の技を体感下さい。