Loro Piana
(ロロ・ピアーナ)

今やLVMHグループの一員であり、ラグジュアリーなファッションブランドのイメージの方が強い方もいらっしゃるでしょう。仕立ての世界においては、常に最上級の生地のみを提供するイタリアを代表するミルという位置付けで、私もこの道に足を踏み入れた時から、特別な憧れと敬意を持って取り扱っているブランドの一つです。2010年頃でしょうか、初めてロロ・ピアーナの生地で仕立てたアイテムは、ウールリネンのネイビージャケットでした。一見何の特徴も無い平織りのネイビー無地でしたが、その着心地に感動した事を記憶しています。

ロロピアーナの歴史

現在のロロ・ピアーナがピエトロ・ロロ・ピアーナによって創業されたのは1924年。イタリアの有力ミルでは200年以上続くミルもある中でこの歴史は随分と新しく感じますが、1800年頃から既にウール商を生業とし、自分たちで生地を織り始めたのが1924年と言う事です。それから20年程で既にウールとカシミヤのトップサプライヤーとして不動の地位を築いたのですから、驚きです。1980年代には自社ブランドを立ち上げ、原毛の調達から紡績・織布・製品化までを行えるラグジュアリーなSPAと言う稀有な存在となります。2013年からはLVMHグループの一員となりますが、ロロ・ピアーナクオリティを守りながらますます発展しています。

アパレル用の生地だけじゃ無い

ロロピアーナにはファッションブランドとしての側面がありますが、純粋にミルの側面にフォーカスしても、さらに3つの部門があります。ロロ・ピアーナのファブリックディビジョンには、アパレル用の「クロージング・ファブリック」に加えて家具用の「ファーニッシング」、ニット製品用の「ニットウェア・ヤーンズ」と言う三つの部門があります。スーツ生地に留まらず、家具にニットウェアと、あらゆるファッション分野にトップクオリティのオリジナルファブリックを供給できる、これがロロ・ピアーナの凄さです。

名作タスマニアン誕生秘話

ロロ・ピアーナ Tasmanian タスマニアン

ロロ・ピアーナに関して面白い逸話が伝わっています。ロロ・ピアーナと言えば「Tasmanianタスマニアン」に代表される、Super150's以上の細番手の原毛を用いた柔らかくドレープ感に富んだ生地を得意とするイメージですが、ロロ・ピアーナ=細番手と認知されたのはある偶然からでした。1970年頃に流通している生地はまだ昔ながらの重くしっかりとした生地が主流でした。イタリアの仕立て職人が「柔らかい生地で仕立てて欲しい」という顧客のリクエストで、どこかに仕立てに向いた柔らかくしなやかな生地は無いかと探していたところ、ロロ・ピアーナがローマ法王庁に納品していた聖職者用の生地「プリースト・クロス」が目に留まり使い始めます。この事がきっかけでプリースト・クロスを改良して生まれたのが、ロロ・ピアーナの名作「タスマニアン」です。今までに無い柔らかくドレープに富む生地の評判は世界中に広まり、ロロ・ピアーナのその後の方向性を決めると共に、「イタリア生地=軽く柔らかい」と言う常識を作っていきました。

最上級の原毛を調達する努力

ロロ・ピアーナ 最上級の原毛を調達

良い原毛からしか良い生地は生まれない。その良い原毛は良い環境で育った動物からの恵み。「最高の製品のみを保証する」ロロピアーナは動物の生育環境までケアをする事で、良質な原毛調達に力を注いでいます。

・Wool ウール

世界的に需要の多いロロ・ピアーナの代表コレクション「Tasmanianタスマニアン」は世界最高級のオーストラリア産メリノウールから織られます。オーストラリアの中でも極細のウールを育てる限られた牧場と独自の契約を交わす事でSuper150's、さらにはSuper170'sと言った極細の繊維を安定して入手できる様になっています。

・Cashmere カシミヤ

カシミヤは内モンゴル産が世界最高と言われていますが、引き合いの多い人気素材だけに紛い物も多く流通しているのが現実です。しかしロロ・ピアーナのカシミヤに関しては安心です。現地モンゴルに原毛の調達と検査を担う自社機関を持ち、ロロピアーナ社のクオリティに恥じない本物の最高級のカシミヤを安定して入手できる様になっています。現地の生産者からしても、毎年大量に買い付けを行う超お得意様のロロピアーナ社には優先的に良い原毛が回される様になっています。

・Vicuna ビキューナ

「神々の繊維」ビキューナの調達にもロロ・ピアーナは並々ならぬ努力をしています。南米ペルーやアルゼンチンにおいて保護区を設立してこの希少なラクダ科の動物の保護を行っています。アンデス山脈に生息するビキューナはその美しい毛故に17世紀以降は乱獲・密猟の標的となってしまいました。17世紀乱獲前は300万頭程が生息していたとされていますが、それが1960年頃にはとうとう個体数が最少の5000頭となりいよいよ絶滅が危惧されるに至り、ペルー政府が保護区を制定する事になります。その約30年後、1994年にロロ・ピアーナが国際ビキューナ共同企業体を率いてアンデスの現地コミュニティと契約を結び、現地生産者と協力してビキューナを密猟などから保護しながら、ビキューナに負担をかけない人道的な方法で毛を刈り、生地を織って輸出する権利を得ます(ビキューナに関しては、密猟者の目的はその美しい毛にありますので、定期的にビキューナの毛を刈る事で密猟からビキューナを守る事にもなるという事です)。さらに2008年にはペルー初となる私有保護区「ドクター・フランコ ロロ・ピアーナ保護区」を設立するまでに至ります。一時は絶滅の瀬戸際に追い込まれたビキューナたちも、こうした取り組みで個体数を増やして伸び伸びと暮らしています。「良い環境で育った動物からしか、良い原毛は採れない」と言う理論に基づき、地域に根ざして現地生産者と協力して動物たちを保護しながら、その恵みを分けてもらっているのです。

イタリアブランド随一のエレガントさ

ロロ・ピアーナの素晴らしさは何でしょう。トップサプライヤーとして素晴らしい原毛を優先して調達する事ができ、そこから生地生産までを自社工場で一貫して行える事、これはすごいアドバンテージです。そのアドバンテージ故か、ロロ・ピアーナの生地にこれ見よがしな感じは微塵もありません。色使いも、柄も、仕上げもあくまで控えめで上品。でも触れて、身に付ければその素晴らしさは疑いようもありません。最高級クオリティに対する自信があるからこその控え目な主張が、ロロ・ピアーナのエレガントさの所以でしょう。これ見よがしでは無く、でも最高品質の着心地をお求めのお客様は、ぜひロロ・ピアーナをお選び下さい。見た目は控え目でも、その手触りや着心地、ドレープ感が生地の素晴らしさを雄弁に語ってくれます。

Loro Piana
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