グレージュのスエード でオーダーいただいた、シングルライダースジャケット
ビスポークのシングルライダースジャケットは、まさにラグジュアリーカジュアルと呼ぶにふさわしい仕上がり。ぜひご覧くださいませ。
ご注文の経緯
I様にはパンツのお修理がきっかけでご来店いただきました。レザージャケットがお好きで何着かお持ちだけれど、既製品だと丈感などしっくり来ない部分があるとのことで、弊店のビスポークレザージャケットをオーダー下さることになりました。オーダーにはふるさと納税のお仕立て券をご利用いただきました。
アイテムは、普段カットソーの上からさらっと羽織れる、シングルライダースジャケットを明るめのスエードで。デザインは画像を元にお打ち合わせさせていただきました。お手持ちのレザージャケットもお持ちいただいて、参考に拝見しました。弊店のスエードは、しなやかでキメの細かい、シープスキン。見本の中から候補の色を選んでいただき、仮縫いの際に実物のスエードを取り寄せて確認いただくことに。
仮縫い
レザーはウールと違い針跡が残るなど縫い直しができないため、仮縫いは本番の革の代わりに、シーチングという薄い布を用いて行います。薄く伸びの少ない布ゆえに、合っていないとアラが出やすく、革以上に体型補正の確認がし易いというメリットもあります。ポケットなどのデザインはペンで書き込まれています。
左肩が上がっていらっしゃるI様。左肩は合ってきていますが、右肩はさらに撫で肩補正を入れたいところ。肩傾斜も補正して合わせることで、見た目も着心地も向上していきます。
袖の前後の振りと太さも確認。ライダースジャケットはテーラードジャケットよりもぴったりとフィットした袖になります。風の侵入を防ぐと共に、空気抵抗を減らす目的ですが、それがライダースのチャームポイントともなっています。
ファスナーを上まで閉めて、スタンドカラー や胸、お腹のフィット感を確認。
こちらが2回目の仮縫いのI様。特に既製品で気にされていた丈感も、バランスを確認して良い丈に落ち着いてきました。身頃のゆとりや体型補正についても、精度が上がって参りました。ここから微調整を加えて、本番のスエードで本縫いに進みます。
完成
シングルライダースジャケットが完成しました。元々はバイクに乗るためのアウターであるライダースジャケットを、普段に着られるように洗練させたデザインとなっています。本来のライダースは、バイクに跨って前傾姿勢になった時に落ち着く設計となっていますが、普段に着るためのライダースジャケットは、通常のジャケットと同じように、まっすぐな状態で落ち着くように設計されています。
ミニマルで都会的。でも、職人のハンドメイドゆえか、温かみも感じる仕上がりです。
シングルライダースといえば、スタンドカラー。スナップボタンで止められる仕組み。
思わず触りたくなる、なめらかなシープスキンのスエード 。ややピンクかかったベージュ。
ファスナーとスタンドカラーのスナップボタンを閉めたところ。
今回はフロント、胸ポケット、腰ポケットと、全てのファスナーの根元のテープを隠すように仕立てることで、ミニマルな印象に。
腰ポケット。
胸ポケット。
ファスナーはYKKの最高峰、EXCELLA(エクセラ)のシルバー。ファスナーの色はもちろんのこと、スライダー(開閉する引き手)のデザインもお選びいただけるのがオーダーならでは。今回はミニマルなデザインにふさわしい、モダンな印象のスライダーをセレクトいただきました。
ファスナーはもちろんダブルファスナー。気温に合わせて開閉するだけでなく、インナーの見せ方や着心地を調整する役割もあります。
絶妙な立ち具合のスタンドカラー 。
端正な袖付け。
ライダースにも様々なバックスタイルがあります。今回はミニマルというテーマに従い、ヨークありで背中は継ぎの無い1枚のパーツでお仕立て。
ヨーク。滑らかな革に繊細なステッチワークが際立ちます。肩から襟にかけてのつながりも美しい。
革の良い部分だけを用いる、オーダーメイドならではの、ほれぼれとする背中。
ステッチワーク。細かい運針にすることで耐久性が向上すると共に、革にステッチが溶け込んで、上品な仕上がりとなります。縫い直しのきかないレザー。細かく見れば見るほど、職人技への敬意が湧いてきます。
袖口のファスナーもライダースならではのディテール。ファスナーを閉めると、バイクに乗った際に袖口からの風の侵入を防ぐように袖口がぴったりとフィットします。そのままでは脱ぎ着ができないため、脱ぎ着をする際は開けられるように工夫されています。
裾を絞れるようにアジャスターがつきます。スエードと同系色のホーンボタンをセレクト。
ご着用
I様にご着用いただきました。この日たまたまお召しだった薄手のニット&ジーンズに、ばっちりの組み合わせ。
出来上がったその日から、お召しになる方の雰囲気やワードローブにすんなりと合うのは、仮縫いも含めて何度も対話を重ねるビスポークならではの仕上がりだと思います。
腕を曲げた時の柔らかいシワの入り方が好きです。
カジュアルでリラックスした雰囲気。でもラグジュアリー感を帯びています。
閉めても良し。丈感もばっちり。
背中もこの美しさ。肩幅もぴったりです。
袖がきれいに落ちています。
I様も大満足のご様子。後日、同じサイズ感にてダブルライダースジャケットのオーダーをいただくという、嬉しい結果に。
信頼して仕立てとフィッティングをお任せいただき、光栄です。世界に1着だけのビスポークライダースジャケット、ぜひ長くご愛用くださいませ。