ライトウエイトのツイードで仕立てたラグランスリーブのアルスターコート

hayashi
店主
林 倫広

英国の名門ミルのツイードにてオーダーいただいたアルスターコートは見所満載です。カジュアルに軽快に着こなせるラグランスリーブのアルスターコート、ぜひご覧ください。

ご注文の経緯

T様にはジャケットをオーダーいただいたところ、仕上がりをお気に召していただき、次にご相談いただいたのがアルスターコートでした。

お洋服が大好きで、オーダーに限らずセレクトショップのパトロールにもよく行かれるT様。アルスターコートが欲しくてアルスターコートの歴史をインターネットで調べたり、既製品のコートをお店に見に行かれたりされていたものの、満足のいくサイズ×デザイン×生地のものはなかなか見つからず。「だったらオーダーしたほうが早いんじゃないかな?」となったそうです。

LINEでのご相談の後、お下見にご来店いただきました。メイドトゥメジャーの場合、既製品と同じくサンプルのデザインがお好きかどうかが重要ですが、弊店のアルスターコートをお試しいただいたところ、アルスターカラーの雰囲気を気に入っていただけました。また、肩がしっかりとされていることもあり、ナチュラルな肩のラインを好まれるT様。一般的なアルスターコートは、ジャケットと同様のセットインスリーブのものが多いですが、弊店のアルスターコートはラグランスリーブ。セットインスリーブよりもカジュアルで柔らかい印象になり、Aラインのゆったりと羽織るフィット感とあわせて、T様のご要望にはぴったりでした。

生地は茶系かグリーン系で、カジュアルな雰囲気の無地かチェックをご希望。なおかつ暑がりでいらっしゃるので、見た目にはちゃんとコート感がありつつ、比較的温暖な東京の冬に対応する軽めの生地をご希望でした。

ご要望をもとに生地をお探ししました。ちょうどご希望の茶やグリーンなどのカントリーな色がバリエーションにあり、しかもウエイトも良い塩梅だったのでお取り寄せしたのは、ABRAHAM MOON & SONS社(アブラハム・ムーン)のシェットランドウール・ツイード。370g/mという厚手のジャケットにも使えるくらいの、コートとしてはかなりのライトウエイトです。

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アブラハム・ムーンは1837年創業の名門。原毛の染色から、紡績、生地を織り上げてフィニッシングに至るまでの全工程を自社で行っている、英国では数少ない一貫生産のミルです。オリジナルのアルスターコートは、北アイルランドはアルスター地方で織られていた、ブランケット代わりにもなるような分厚い生地を用いられたそうですが、現代の日本で実用的に楽しめるアルスターコートを考えた時には、英国カントリーの匂いを残しつつ、軽快でしなやかなムーンのシェットランドウール・ツィードは、とても良いセレクトと言えるでしょう。

ちなみにシェットランド・ウール(Shetland wool)とは、スコットランドの北方にあるシェットランド諸島に生息するシェットランド・シープから採れる毛のこと。厳しい自然環境の中で生息する羊の毛だけに、薄くても防寒性が高いです。英国北方の羊毛でツイードと聞くと、良くも悪くもゴワゴワチクチクをイメージされるかも知れませんが、シェットランドウールは、英国羊毛の中でも際立ってしなやかで、チクチク感がなくしっとりとして、光沢すらあります。

そんな原毛も織りもメイドインイングランドのシェットランドウールの中でも、いかにもイギリスのカントリーらしい深いグリーンの無地を一目で気に入っていただき、「これでオーダーしよう!」となりました。元祖アルスターコートは19世紀末、緑色の分厚い生地を用いられていたと伝わっています。アルスターコートのルーツの色を選ばれるとは、素晴らしいこだわりです。

完成

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シェットランドウールならではのドレープ感と艶。アルスターコートにはベルトが付いており、ウエストを絞って防寒性を高めると共に、シルエットを変化させることができます。

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このコートの顔である、アルスターカラー。ラペルより大きな上襟が特徴。くっきりと入ったミシンステッチが効いています。

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袖口にはタブ。雨風の侵入を防ぐギミック。実際に絞ると袖のシルエットの変化を楽しめます。光が当たると、ツイードの複雑な混色が浮かび上がります。

ご着用

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バスケットボール・プレイヤーでご身長の高いT様。既製品のアルスターコートではなかなか見つからない、膝下までのロング丈もオーダーの際のこだわり。ベルトの位置にAラインのシルエット、ばっちりのバランス。

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元は貴族の旅行用アウターというカジュアルなコート、たっぷりの着丈に合わせて袖丈も長めに。

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いわゆる怒り肩でジャケットのツキジワに悩まされがちなT様。怪我をした兵士でも容易に脱ぎ着できるようにと考案されたラグランスリーブなので、肩の圧迫感がなく快適な着用感。首周りもフィットしています。

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ウエストをベルトで締めて、袖口もタブで絞って。ドレープ好きにはたまりません。複雑な色も見飽きないです。

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ベルトをポケットに収納して、ボタンを開けて着ていただくとカジュアルな印象に。この日のT様のコーディネートのように、タートルネックにコットンパンツのオフスタイルにもすんなり合うラグランスリーブのアルスターコート。オンオフ兼用のコートとして、実はチェスターコートに続く第二のコートの選択肢はアルスターコートなのかも知れません。

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ベルトでウエストを絞った後ろ姿が、また格好良いです。深めのセンターベントで、ロング丈ながら足さばきも良し。

お仕事にご出張にと、早速活躍しているとのことでした。軽快でも丈夫でシワにならないツイードなので、脱いで持ってもかさばらず気を遣わなくて良いのもポイント。ぜひお仕事でもプライベートでも沢山着て、育てて下さい。

Photo Gallery

ゼニアのチャコールグレーカシミヤで仕立てた、ロング丈のダブルチェスターコート グレージュのスエード でオーダーいただいた、シングルライダースジャケット
Posted by Tomohiro Hayashi
林 倫広

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