ドレッシングラボのオーダーコートの新作オーダースプリングコート『Spritumn Coat(スプリタム・コート)』をご紹介します。
今春でも季節外れの急な肌寒い日にさっと羽織ったり、梅雨時にはレインコート代わりに携帯したり、さらに秋から冬にかけては、ウールコートやダウンに切り替えるまでの繋ぎのアウターとして着たりと、シーズンレスで活躍するお役立ちアウターが、ドレッシングラボのスプリタム・コートです。
ご注文から完成まで40日ほど頂戴しますが、薄手で軽快ですので、これからオーダー頂いても長い期間活躍すること請け合いです。
これら全てを満たしたオーダーメイドのコートです。Spritumn Coat(スプリタム・コート)のSpritumn(スプリタム)とは、Spring(スプリング 春)とAutumn(オータム 秋)を合体させたオリジナルの単語です。
スプリングコートというとどうしても春のイメージが強いですし、トレンチコートやステンカラーコートというと、季節よりもコートのデザインの名称になります。かと言って英語でスプリングコートに相当するTopcoat(トップコート)だと、ネイルに施すトップコートを連想される方が多いと思います。
という訳で、「春も秋もシーズンレスで着られる、軽快で雨風避けとなるコート」という意味を込めて、Spritumn Coatスプリタム・コートというオリジナルのネーミングを考えました。さらにスプリタム・コートは、シリーズ化しまして、ステンカラーやチェスターなどお馴染みのコートのデザインをスプリタム・コートに落とし込んでご提案していきます。
スプリタム・コートのご紹介の前に、そもそもの「スプリングコート」そしてスプリングコートの代名詞とも言える「トレンチコート」とは何か、おさらいをしておきましょう。
スプリングコートとは
Spring Coat(スプリングコート)というのは日本固有の和製英語で、世界的には単にTopcoat(トップコート)と呼ばれます。その名の通り春に着ることを想定した、薄手のコートを指します。ステンカラーコートやトレンチコートが代表的ですね。色はベージュやカーキなどの明るい色から、ネイビーやブラックなどのダークカラーまでバリエーション豊富です。スプリングコートと言いつつ、秋から冬にかけての端境期、ちょっと羽織りたいけどウールのコートには早いかなという時にも活躍します。素材はコットン素材をはじめ、最近ではナイロン素材、ポリエステル素材や、ゴアテックスなどの高機能素材も用いられます。
続いて、メンズでもレディースでも良く耳にするトレンチコートとは何でしょう?
トレンチコートとは
英語ではTrench Coatと書きます。このTrenchとは「塹壕(ざんごう)」のこと。第一次世界大戦の時、イギリス軍が塹壕戦での過酷な環境において少しでも兵士が快適に戦いやすくなるようにと考え発明された戦場のアウターが「トレンチコート」なのです。
トレンチコートは、数あるオーバーコートの中でも最も付属品の多いコートですが、それは戦争における機能性を追求した結果です。両肩につくエポレットというタブは、階級章をつける他、銃や水筒のストラップ(肩紐)を通して、肩からずり落ちるのを防ぐためのもの。右肩につく独特の当て布はガンフラップと言います。銃を打つ際に銃床を支える箇所を補強しつつ肩を衝撃から守る役割がありました。ベルトにつくD環(Dリング)は手榴弾をぶら下げるためのもの。
いまや多くの女性も愛用するトレンチコートですが、ルーツを辿るとかなりハードボイルドなアイテムなのです。サイズ感は変化しユニセックスで着られるファッションアイテムになったとは言え、トレンチコートは未だかなり軍服だった頃のディテールを忠実に残していると言えますね。
トレンチコートの生地はコットン・ギャバジンという撥水加工を施して高密度に織られたコットン素材が代表的ですが、ナイロン素材がまだ無く防水と言えばゴム引き素材が主流だった時代、軽量でありつつ雨風を避けられる画期的な素材が、このギャバジンでした。ちなみにこの現代でも愛用される素晴らしい素材を19世紀末に考案したのは、トレンチコートで世界的に有名な英バーバリー社創業者のトーマス・バーバリー氏です。
さて、いよいよスプリタムコートの特徴をご紹介して参ります。
スプリタム・コートの特徴
軽さ
毛芯や裏地を省いた大見返しの仕立てにしたことで、とにかく軽いです。さらに軽さを出すために、薄くても強度の高い生地を中心にチョイスしました。芯無し裏地無しで薄く柔らかいので、ナイロンなど薄手の生地で仕立てれば、コンパクトに畳んでバッグに収納できます。内側の縫代はパイピングを施すことで、美しく丈夫に仕上げています。パイピングは上質なキュプラ裏地からお好みの色を選んで頂けます。
撥水性
レインコート代わりになる様、生地の段階からしっかりと撥水加工が施された生地をセレクトしました。雨の多い時期、折り畳み傘と一緒にこのコートをバッグに忍ばせておけば安心です。
防風性
密度が高く風を通しにくい生地を選びました。風を防いでくれるので、薄手でも結構温かいです。「ジャケット1枚じゃ寒いけれど、起毛したウールのコートは雰囲気的に重いかな」という春の始まりや秋の終わりなどの微妙な時期に、冬用コートとの繋ぎの役割をしてくれます。シーズンレスで活躍してくれるコートです。
通気性
雨風を防いでくれるのは嬉しいけれど、湿気の多い日本では蒸れるのが悩みどころ。結露などしてしまっては、快適ではありません。スプリタム・ステンカラーコートには、通気性を高めるために、脇の部分に金属のベンチレーションを配置しました。デザインのワンポイントにもなって、個人的にもおすすめのディテールです。ベンチレーションのメタルパーツの色をお好みで選んでいただけるのも、オーダーならではの楽しみです。
汎用性
弊店のスプリタム・コートはカジュアル過ぎず、ドレッシー過ぎずのシルエットとデザインで、あらゆるシーンで着て頂くことができます。スーツやジャケットの上から羽織れば、程よく抜け感のあるドレススタイルになりますし、カットソーやパーカーの上から羽織れば、カジュアルなコーディネートを上品にまとめてくれます。ビジネスユースだけでなく、オフにも着回しが効くと好評頂いております。
上質感
縫製は、弊店のスーツやコートの仕立てでお世話になっている国内最高峰の仕立て工場に依頼しています。スポーティーな雰囲気の中にも、熟練の仕立てのテクニックと、丁寧な縫製が見てとれます。使い捨てではなく長く使える、上質な服をお求めの方にお召し頂きたい、高品質なテーラードコートです。
そして、もちろん1着1着がオーダーメイドですので、お体とお好みに合わせて、サイズ調整や体型補正を施してお客様だけの1着をお仕立てします。「スプリングコートが1着欲しいけど、既製品だと気に入るデザインがなかなか見つからない」「軽い羽織り物が欲しいんだけど、既製品だとサイズが合わない」といった方に、オーダーメイドのスプリタム・コートは大変お勧めです。
上記の特徴を備えたオリジナルのスプリタム・コートをシリーズ展開して参ります。まずは以下の2モデルです。
Spritumn Raglan Coat(スプリタム・ラグランコート)
Spritumn Chesterfield Coat(スプリタム・チェスターコート)
それぞれの特徴をご紹介して参ります。
Spritumn Raglan Coat
(スプリタム・ラグランコート)
弊店スプリタム・コートの火付け役とも言える、代表的なモデル。2020年12月に「スプリングコート」としてデビューして以来、弊店のロングセラーアイテムです。
ベースのデザインは大好評を頂いている弊店のラグランコート(シングルとダブルの2種類)。ゆったりとしたラグランスリーブにAラインで、ふわっと羽織れるのがポイントです。そこにさらにスプリタム・コートならではのアレンジを加えました。
シングルはクラシックなステンカラーになっています。もともとは軍服をルーツに着やすさを追求して生まれたラグランコート。袖も身頃もゆったりとしたデザインですので、厚手のニットや昨今のビッグシルエットの服を中に合わせても、もたつきなど心配ご無用です。どんな服の上からでも、ばさっと羽織れば様になってしまう、そんなお役立ちアイテムがスプリタム・ラグランコートです。
ウェストにはお好みでベルトが付けられます。ベルトを結ぶと表情が変化します。背中に生まれるドレープが格好良いと、ご注文のお客様からは好評頂いております。
ベルトループが2つ着きますので、ベルトを結ばない時はポケットに端を収納するか、垂らして着ることもできます。ベルトを結ばずに前を開けて着ると、風に裾がなびく軽快なAラインを楽しんで頂くことができます。
内ポケットが左右に1つずつ着きます。お好みで内ポケットの上にネーム刺繍を入れることができます。字体や色を選んで頂くのは、楽しいですよ。
内側は裏地と芯地を無くしたアンコン仕立て。これが軽さ柔らかさの秘密です。パイピングがアクセントになっています。
脇にはベンチレーション(通気孔)としてメタルパーツが着きます。スプリタム・ラグランコートのアイコニックなディテールです。
スプリタム・ダブル・ラグランコート
ダブルのトレンチコートのイメージで、よりシンプルなディテールのコートをお求めの方に大好評を頂いているのが、スプリタム・ダブル・ラグランコートです。
シングルよりも重厚な見た目となりますが、皆様シングルとダブルで着比べると迷ってしまわれる格好良さです。見た目に反して、着心地はとても軽快です。
ダブルはボリュームのあるアルスターカラーを採用しています。カーブを描いた大きめの襟には一般のスプリングコートには無いクラシカルさがあり格好良いです。ナイロン素材を採用した場合、ステッチが入っている部分の独特の波打ちがまた良い雰囲気です。
Spritumn Chesterfield Coat
(スプリタム・チェスターコート)
弊店のオーバーコートの中でも一番多くご注文を頂いているチェスターコート(チェスターフィールドコート)。それをスプリタム・コートに仕立てました。ゆったりと仕立ててジャケットの上から羽織るも良し。ジャストフィットに仕立てれば、ショップコートや白衣の様に、ニットやシャツの上からジャケット代わりに着られます。
スプリングコートと言えばステンカラーコートとトレンチコートの2強ですが、あえてのスプリタム・チェスター、新しい着こなしのご提案です。
今回のサンプル、生地は後ほどご紹介するお勧めの生地、オルメテックス社のナイロンコットン素材を採用しました。チェスターコートのドレッシーな雰囲気と、新素材のスポーティーな雰囲気のミックスがとても新鮮です。
フロントのボタンは3つボタンの中1つがけ(3つボタン段返り)。芯無しの仕立てですが、襟のロールが綺麗に出ています。
こちらのスプリタム・チェスター。実はジャケットやスーツと同じサイズのフロントボタン(20mm)を採用しています。通常コートは23〜25mmの大きいフロントボタンを使いますが、すっきりと軽快に見せるために、ジャケットと同じサイズのボタンで仕立てました。ボタンの間隔やフロントの重なり分量なども調整し、すっきりと見せる様工夫しています。ボタンは水牛の角を削り出したボタン(ホーンボタン)はじめナットボタンやシェルボタンなど、お好みでお選び頂けます。
通常のチェスターコートはピックステッチという手縫い風の上品なステッチが施されますが、スプリタム・チェスターはスポーティーにミシンステッチを採用しています。ナイロン系の生地にはミシンステッチが良く合います。
胸ポケットにもさりげなくアレンジを。弊店のジャケットやチェスターコートの胸ポケットは通常カーブを描く「バルカポケット」を採用していますが、スプリタム・チェスターはあえて主張の少ない箱ポケットを採用しています。スポーティーで、さっぱりした味付けにしています。
とは言えオーダーメイドですので、お好みでバルカポケットにするも良し、箱ポケットよりさらにシンプルに「胸ポケットを無くす」という選択もあります。
毛芯やパッドの入らないアンコン仕立てですので、ショルダーラインもナチュラルで見た目も着心地も軽快。袖山にはギャザーの様に柔らかいシワが入ります。スポーティーな中にも本格的なテーラードの雰囲気が伝わります。
チェスターコートと同じく、スプリタム・チェスターも袖口はジャケットやスーツと同じく切羽がつきます。標準は4つボタン並べ付けまたは重ね付け(画像は並べ付け)。お好みで本開き(本切羽)か開き見せかをお選び頂けます。チェスターコートの袖口は4つボタンが基本ですが、スプリタム・チェスターならあえてカジュアルに、3つボタンや1つボタンなども格好良いと思います。
腰ポケット、フラップのミシンステッチが効いています。腰ポケットはこちらの両玉縁ポケット(フラップ有り・無し)と、スプリタム・ステンカラーと同じ、斜めの箱ポケットがお選び頂けます。
フラップを仕舞ったところ。すっきりとして格好良いです。
襟の裏は通常のコートやジャケットではカラークロスと呼ばれるフェルトの様な別生地を使いますが、スプリタム・コートは身頃と同じ「共生地」を標準採用。襟を立ててもすっきりと見えます。
スプリタム・チェスターの内側。アンコン仕立てで、裏地を無くして見た目も着心地も軽快に。補強で施したパイピング(裏地を使った縁取り)が見た目のアクセントになっています。生地に合わせてお好みのパイピング色をお選び下さい。
左右に大きめの内ポケットがつきます。内ポケットの上には、お好みでネーム刺繍が入れられます。
ボタンの裏側には、「力ボタン」がつきます。力がかかるボタン付け根を補強して、ボタンが取れにくく且つ生地が痛まない工夫です。
スプリタム・チェスター、着てみました。
今回私はほぼジャケットと同寸のジャストサイズで仕立てました。中にジャケットは着れなくはないですが、どちらかというとショップコートの様に、シャツやニットの上からジャケット代わりに着るイメージです。この日はウールのオーダーメイドポロに合わせました。
腰ポケットのフラップを中に収納して、手を入れてみました。また印象が変わります。
丈は膝上丈。1日着て仕事をしましたが、立ったり座ったりの多い1日でも、ノーストレスでした。電車に乗られたり、お車を運転される方には、このくらいの丈バランスが動きやすくてお勧めです。
後ろ姿。弊店のチェスターコートはバックベルトをお付けすることが多いですが、スプリタム・チェスターはシンプルに、バックベルト無しで仕立てました。リラックス感とカジュアル感を出すために、ウエストシェイプは強くし過ぎない様に気をつけました。
ラペル幅を8.5cmと弊店のいつものジャケットよりも細くしています。それにより軽快な印象に。襟を立ててもすっきりとした見た目。
シャツ・タイを合わせてドレスアップするも良し、細身のドローパンツにパーカーを合わせてカジュアルダウンするも良し。スプリタム・チェスターが1着あると、春秋のコーディネートに幅が出ます。
裏地・芯地が無いので、ものすごく軽いです!そしてナイロンコットンならではの滑りの良さで、裏地が無くても全くひっかかりがありません。コンパクトに畳めるので、バッグに忍ばせておいてさっと羽織ることもできます。
スプリタム・コート用の生地
スプリタム・コート用に、ドレッシングラボ 一押しの生地を厳選してご用意致しました。一般のオーダーサロンでは恐らくほとんど扱われていない生地だと思います。一部ご紹介致します。
Olmetex オルメテックス
ナイロン74% コットン26% 全12色
高品質なアウター素材でお馴染みの伊オルメテックス社のプレステージ・コレクション。上でご紹介したシングルのシングル・スプリタム・ラグランならびにスプリタム・チェスターに使用した、特にお勧めの生地です。
ナイロンとコットンのミックス。両者の良いとこ取りをした素材で、ナイロンの軽快さや強度と、コットンの肌馴染みの良さを兼ね備えています。マットな質感、そしてこなれた感じのシワ加工が絶妙です!織り上がった生地にタンブラー加工を施すことで、ナチュラルな凹凸感を付与しています。復元性に優れていて、シワを全然気にしなくて良いのが嬉しいところです。
ベージュやカーキ、ネイビーなどの定番色に加え、女性のお客様に人気の、春らしいパステルカラーも充実しています。
こちらの生地、スプリタム・コートには必須の撥水加工がもちろん施されていますが、非フッ素系の撥水剤を使用することで環境にも配慮されているという、素晴らしいおまけつきです。
Olmetex お仕立て事例
LIMONTA リモンタ
ナイロン100% 全12色
ナイロンと言えば、このファブリックメーカーしかないでしょう。先にご紹介したオルメテックスとうって変わり、高密度でシャイニーなラグジュアリーナイロンです。ネイビーのダブル・スプリタム・ラグランコートに使用しています。
とにかく発色が良いです。この発色の良さでモスグリーンやネイビー、ブラックなどダークカラーも重くなりません。何気にオレンジも見逃せません!光が当たると色に独特の深みが出て、本当に美しいです。
リモンタと言えば、このシリーズも美しいです。
ナイロンソラーロ。
ブラウン×ブルー
ベージュ×グリーン
LIMONTA お仕立て事例
British Millerain ブリティッシュ・ミラレーン
オイルドコットン100%
最後に英国生地を。オイルドコットン(ワックスドコットン)の代名詞とも言える老舗ミルです。春夏向けのスプリングコートには少々重めかなとも思ったのですが、個人的にかなり好きな雰囲気だったのでご紹介しちゃいます!バブアーなどラギッドな雰囲気がお好きな方には大変お勧めです。弊店でも根強い人気の生地です。
オイルドコットンの老舗ながら、現代の生活にマッチする様に素材がアップデイトされているのが素晴らしいところ。オイルドコットンの雰囲気と撥水性がありつつ、オイルドコットン特有の匂いやベタつきが無いので扱いやすく、電車など公共交通機関にも安心して乗って頂けます。
英国のカントリーサイドに馴染みそうなアースカラーが目白押しです。
このチェック、間違いない格好よさです!着倒してシワや擦れなど経年変化が出てきたら、ますます格好良いでしょう。
British Millerain お仕立て事例
ドレッシングラボのスプリタム・コート、いかがでしょうか。1着お持ちでしたら、季節やお天気を問わずオンにもオフにも大活躍間違い無しのアイテムです。
ご注文下さったお客様にお話を聞きますと、「上質且つシンプルなスプリングコートは、探してもなかなか見つからない」とのことでした。また既製品の場合フィットするサイズを選ぶと袖丈が足りない、着丈が微妙に長い短いなどのご不満があって、オーダーメイドにお越し頂くケースが多くありました。
弊店にはご紹介したスプリタム・コートの試着サンプルと共に、肩にかけてご覧いただける特大の生地見本をご用意しております。皆様のご来店を心からお待ちしております。スプリタムコートのオーダーについてお問い合わせがございましたらContactフォームから、ご試着などご来店のご予約はReservationフォームから、お気軽にご連絡下さいませ。