ゼニアのチャコールグレーカシミヤで仕立てた、ロング丈のダブルチェスターコート
艶やかなカシミヤで仕立てた、素晴らしいダブルチェスターコートが完成しました。仮縫いを経て完成した1着、ぜひご覧ください。
ご注文の経緯
Y様はコートのオーダーのご相談が初のご来店。カシミヤのロング丈のチェスターコートをお探しで、メゾンブランドのチェスターコートなどもご試着されたそうですが、デザインが気に入ってもお体に合わないところがあり、「それならオーダーメイドも視野に入れようか」となったそうです。
インターネットでオーダーメイドのチェスターコートを検索されたところ、弊店のダブルチェスターコートの画像が目にとまり、まずはお下見にご来店。生地はカシミアをご希望。その日はいくつか生地の候補を選んでいただいた上で、別日に奥様とご一緒に生地とデザインの最終決定のためご来店くださることになりました。
生地はエルメネジルド・ゼニア社のカシミアに決定。鱗状に光沢が強いカシミアはお好みでないとのことで、しっとりと光る光沢感に加えて、お探しだった黒に近い濃いグレーの色が決め手となりました。
デザインは最後まで、シングルチェスターかダブルチェスターか、サンプルのコートを着比べてお悩みでした。シンプルで着回しのし易いシングルか、より主張が強いダブルか。
どちらもお似合いでしたが、軽快で見慣れたデザインのシングルチェスターに比べ、ダブルチェスターはピークドラペルにダブルのフロントと重厚感があり、お召しになった100人が100人お似合いになるものではありません。Y様の上品なご雰囲気やすらりとしたご体型に、ダブルチェスターコートがとても自然に馴染んでいたので、シングルチェスターはまたのお楽しみとして、初志貫徹でダブルチェスターコートをオーダーいただくことになりました。
弊店のダブルチェスターコートのサンプルは一般的な膝丈ですが、Y様のリクエストはできる限りのロング丈。さらに弊店に来られる前に試着されたラグジュアリーブランドのコートのように、ウエストから裾にかけてのラインがタイトに体に沿って、筒状にすっきりと見えるシルエットをご希望でした。そこで、仮縫いを挟んでボタン位置や丈、シルエットの確認をさせていただくこととなりました。
仮縫い
ポケットやボタンは仮の白い布(スレキ)で表現されています。簡単に解ける白い躾糸(しつけ糸)が、生地を仮に縫い合わせると共にガイドラインの役目も担っていて、フィッティングの確認がし易いようになっています。
ビスポークシューズオーダー会の会期中だったので、靴のサンプルに囲まれてのフィッティング。既にかなりお似合いですが、ここから細かい調整をしていきます。
首の付け根から胸にかけて、ぴったりと吸い付くようにフィットしています。肩傾斜も合っていて重量が分散されるので、ボリュームのあるカシミヤにロング丈ながら、重く感じることがありません。
仮縫いでは、ボタンの間隔を広げて、連動して腰のポケット位置をわずかに下げました。ポケット位置が高く、ボタンとボタンの間隔が狭い方が緊張感が保たれて格好良い印象となるのですが、あえてボタン間を広げることで、ハンサムすぎないモードな雰囲気を作ります。
また、肩幅と背幅を詰めて、よりシャープなシルエットを目指します。筒状のシルエットになるよう、裾周りもさらに詰めました。
完成品
美しい。ボタンは水牛の角を磨いて光沢を出したホーンボタンのブラックでシックに。
わずかに丸みを帯びたワイドラペル。ぴったりと身頃に沿っているのは、良い仕立ての証拠。
ポケットや袖口など、ディテールはシンプルに、オーソドックスに。
カシミアならではの、透明感のある深いチャコールグレー。上品な艶。
衿が登っています。いかにも着心地良さそう。
ビロードのように滑らかな生地に、ピックステッチが効いています。
肩パッドを入れず、毛芯で構築された肩まわりは、見た目も着心地も柔らかく軽快です。
ご着用
いよいよお袖を通していただきました。仮縫いの修正も生きて、ばっちりのバランス。
コートも居心地良さそう。お体とコートがぴったり沿っていて、好ましいです。
胸のフィット感、アームホールからウエストシェイプにかけての線も美しい。
タートルネックにジーンズを合わされたY様のコーディネートもあるでしょうが、フォーマル過ぎず、カジュアルユースにも対応できそうな柔らかさも兼ね備えています。
最上級の生地と仕立て、対話を重ねて追い込んだフィッティングが一体となって、Y様のご要望を満たす、オーダーならではの良い仕上がりとなりました。
Y様にも「オーダーメイドをお願いして良かった!」と大変お喜びいただきました。後日具合をお伺いしたところ、早速お出かけ際に活躍しているとのこと。
ビジネスやフォーマルシーンでのご着用はもちろんのこと、オフシーンにもマッチする柔らかい仕立てのダブルチェスターコート、ぜひ永くご愛用いただけますように。