2020AWリコメンドファブリックvol.5 "Fox Brothers"

ザ・ドレッシング・ラボではこれまでのリコメンドファブリックでもCaccioppoliDRAPERSなどイタリア製の生地を中心にご紹介していますが、イギリス製の生地ももちろんお取り扱いございます。弊店で代表的なイギリス製生地と言えばDORMEUIL、そして本日ご紹介するFox Brothers フォックス ブラザーズです。

フォックス ブラザーズは英国西部のサマセットにて1772年創業の老舗ミル。ブリストル港が近くオーストラリアから届いた原毛の移動に便利であった事から毛織物業が栄えたサマセット、現在は衰退しその面影を残すのみですが、フォックス ブラザーズは今も同じ土地で生地を織り続けています。

ちなみにフォックス ブラザーズのトレードマークはお馴染みのキツネ。ですが、このフォックス ブラザーズの「フォックス」は創業者のトーマス・フォックス氏の名前を取ったもの。現在は稀代のウェルドレッサーでもあるダグラス・コルドーさんが2009年からCEOとして伝統のバトンを引き継いでいます。

Fox Brothersと言えば、やはりフランネル。フォックスのフランネルは英国製フランネルの代名詞的存在であり、「フォックスのフランネル以外はフランネルにあらず」という、ちょっと他のミルからお叱りを受けそうな言葉さえ残っている程。でも実際1950年頃までフォックスは「フランネル」を商標として保有していたそうです。

20201127_foxbrothers_02.jpgちらみにフォックスのフランネルは厳選されたオーストラリアンメリノウールを使っているとは言えSuper○○'sなどの細番手を使っている訳でも無く、はたまたカシミヤがミックスされている訳でも無く、オーソドックスなウールでありながらフランネル生地の中では非常に高価な部類に入ります。その裏には昔から変わらない原料・製法による生地作りの手間が隠されています。織り上がった生地を6時間木片で叩いて風合いを引き出す伝統の作業。織機は旧式織機に限らず現代の織機も使われていますが、空気を含んで膨らみ感のある生地を織る為に織機の速度を落としてゆっくりと織る。これら非効率にも見える拘りを貫く事で、コシがありながらふっくらしなやかで霜降り感抜群の、「これぞフォックスのフランネル」と言われる生地が生み出されるのです。

ここからは弊店で取り扱いのあるバンチブックをご紹介していきましょう。

"VINTAGE FOX" ヴィンテージ フォックス

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フォックスの強みの一つが18世紀から脈々と受け継がれたアーカイブの数々。2000年代に入りフォックスは倒産の危機に陥りますが、新CEOダグラス氏の手腕でV字回復します。そのダグラス氏がフォックスの再興を確信しCEOになろうと決めたのは、サマセットの工場に創業以来保管されてきた貴重なアーカイブを目にして、その価値を理解したからだと言われています。

このヴィンテージ フォックスもその貴重なアーカイブの産物です。1940年代のアーカイブブックからセレクトされた全27種類のコレクションは、これぞフォックスという普遍的かつユニークな内容となっています。
20201127_foxbrothers_04.jpg20201127_foxbrothers_05.jpg20201127_foxbrothers_06.jpg20201127_foxbrothers_07.jpg20201127_foxbrothers_08.jpg20201127_foxbrothers_09.jpg深みのある発色と霜降り感が絶妙な無地、これぞフォックスというチョークストライプ、スーツはもちろんジャケット単品で仕立てても素敵なチェックの数々。定番のグレー、ネイビー系に加えてカントリーサイドに溶け込みそうなブラウンやベージュなどのアースカラー使いがフォックスらしく、また今の気分にもマッチします。ちなみにフォックスがなぜフランネルを織る様になったかというと、トゲの生えた植物が多いサマセットの自然環境において耐久性がありトゲから身を守る素材が必要とされたからだと言われています。この「ヴィンテージ フォックス」には、そんなフォックスの出自とサマセットの自然を感じます。

"FOX CITY" フォックス シティ

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ヴィンテージフォックスが伝統のフォックスだとすると、このフォックス シティはフォックスらしさがありつつ今のフォックスです。平織で1mあたり300g前後のウェイト、起毛感も透け感も無いこちらの生地は、真夏以外のスリーシーズン着られる汎用性の高い生地です。このフォック シティ、色柄もさる事ながらあえてのマットな質感が最高に格好良いのです。

20201127_foxbrothers_12.jpg20201127_foxbrothers_13.jpg20201127_foxbrothers_14.jpg20201127_foxbrothers_15.jpg20201127_foxbrothers_16.jpgビンテージ調のドライな質感に、フォックスらしいスモーキーな中間色が絶妙です。見た目に違わず耐久性が高くシワに強いので、トラベルスーツやパンツ単品にもうってつけです。3シーズン対応でガシガシ着られる気兼ねの無さ。この生地で1着あれば、かなり頼もしいワードローブとなるでしょう。

250年の伝統を武器にダグラス氏の手腕によって急成長しているフォックス ブラザーズ。ダグラス氏のキュレーションによって提案されるフォックスは、変わっていない筈なのに今が一番格好良いです。制服としてのスーツが終わりを告げた今だからこそ、歴史と物づくりの情熱、そしてダグラス氏のセンスが詰まったフォックスの生地でオーダーされるのはいかがでしょうか。着て体に馴染ませて育てて、ずっと愛着を持てる服となるでしょう。

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ザ・ドレッシング・ラボ 2021年春夏の計画 Repair and Reform ジャケットのエルボーパッチ&パンツの股ずれ補修
Posted by Tomohiro Hayashi
林 倫広

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