RYO IKEDA ビスポークシャツ前編「チョアジャケット」
シャツの仕立て職人、池田亮さんにお願いしたビスポークシャツ。その仮縫いの模様をご紹介いたします。前編は弊店オリジナルのチョアジャケット。ぜひご覧ください。
池田亮さんと初めてお会いしたのは2022年のこと。元々はお取引先様の開いてくださったパーティーでお会いしてご挨拶をさせていただいた程度でしたが、共通の知人である仕立て職人の方が「感性がきっと林と合うんじゃないか」と改めて紹介してくださり、2022年末に人生初のビスポークシャツを個人的にお願いしました。
素晴らしい仕上がりに満足して次の注文をさせていただきたいと考えておりましたが、その後池田さんも私も忙しくしていてしばらくご無沙汰しておりました。しかし、今年の8月に再会して新たにドレスシャツとチョアジャケットの仕立てをお願いすると共に、ドレッシングラボにてオーダーイベントを開催させていただくことになりました。
お願いしたビスポークのチョアジャケットの仮縫いの様子をご紹介させていただきます。
Chore Jacket(チョアジャケット)とは、アウトポケットの付いたワークジャケットのこと。chore(チョア)とは英語で「雑用」「作業」を指すので、直訳すると作業用上着。私はカバーオールという呼び名の方が馴染みがあるのですが、世界的にはチョアジャケットの方が一般的で、日本でも定着してきたことから、チョアジャケットと呼ぶことにします。
私がお願いしたチョアジャケットは、3パッチポケットと、パッチポケットの内側に一回り大きな内ポケットが3つ付いたデザイン。内ポケットのステッチが、パッチポケットの周りを囲むように表に出るのですが、そのステッチの雰囲気がこのジャケットの見どころです。
シャツの仕立て職人の方にこんなジャケットのオーダーをしても良いものか、と恐る恐るではありましたが、池田さんも「面白いですね!」と快諾してくださり、嬉しくなりました。
フレンチワークジャケットなど、王道のチョアジャケットも大好きですが、仕事で着るにはカジュアルすぎるもの。また、主に古着で探すのですが、サイズや色、状態が自身にフィットするものには長年出会えないでいました。
ここで池田さんと出会えたのは千載一遇のチャンス。直線的なゆったりとしたシルエットにパッチポケットの正統なチョアジャケットでありながら、端正な仕立てと上質な生地で、シャツタイやスラックスと合わせて着られる、落ち着いて上品なスタイルのジャケットが欲しい。今まで温めてきたチョアジャケットへの思いを、池田さんに託しました。
楽しみにしていた仮縫いとご対面。胸が高鳴ります。
奥がドレスシャツ、手前がチョアジャケットの仮縫い。ビスポークシャツの仮縫いは、シーチングという生成りのコットン生地を用いて行います。
イメージが具現化されて、とても幸せな気分でテンションが上がっております。
生地は最初の打ち合わせから仮縫いまでの1ヶ月ほど、悩ませてもらいました。「なるべく淡い色のヘリンボーンのリネン生地」という方向性にぴったりの生地がドラッパーズの「ポルトフィーノリネン」に見つかりました。ドラッパーズならではのカジュアルさとエレガントさを兼ね備えたクラシックな生地。納得のセレクトで悩んだ甲斐がありました。
池田さんにも確認いただいたところ、「縫製は全く問題なく、今回のチョアジャケットにもばっちり合うでしょう!」と太鼓判。
いよいよ仮縫いのフィッティングがスタート。
フィットしすぎるとチョアジャケットの雰囲気が出ないのですが、そのあたりはさすがワークにも造詣の深い池田さん。胸から裾にかけて直線のシルエットで、チョアジャケットらしさがしっかりと表現された仮縫いに。
真剣勝負の着せ付け。
袖丈を調整。ドレスシャツを着た際に綺麗に1cmほどドレスシャツの襟がのぞく、襟の高さが絶妙。
身幅をチェック。
ストンと落ちるゆったりとしたシルエットを残しつつ、上品に見えるよう、身頃のゆとりを少し減らすことに。お互いに遠目に確認しながら言語化してイメージを共有していきます。これぞビスポーク。
ピンを打って身頃のゆとりを調整。
着丈も3cmほど短くすることにしました。
着丈詰めに連動して腰ポケットも上に移動します。ポケットの大きさやデザインはこのままに。ジャケットのアウトポケットは角を丸くしますが、チョアジャケットの場合はこの角落ちが王道。
袖口はシンプルな筒袖にするつもりでしたが、仮縫いの直前にリサーチしたビンテージのチョアジャケットからヒントを得て、チョアジャケットだからこそのユニークな仕様にしてもらうことにしました。このあたりのアドリブが許されるのも、ビスポークならでは。
袖丈、身幅、着丈を調整した状態。横にはゆったり、縦にはすっきり。バランスが整いました!
チョアジャケットの前立てはボタンが見える打ち抜きの仕様が多いですが、あえてボタンが隠れる比翼仕立てをリクエスト。端正な表情になりました。
シャツの仕立て職人ならではの、襟の美しさ。
シャツ&タイともしっかりと合います。この日着ているシャツは池田さんに前回仕立てていただいた、生成りのドレスシャツ。
ありそうでないがチョアジャケットが完成に向かいます。これは楽しいです。
大きな内ポケット。機能性と共に、見た目のポイントともなっている、このジャケットの鍵ディテールです。
あまり重いものは入れませんが、ちょっと出かける時に重宝しそう。何よりポケットが沢山あるのが好きです。
最終チェック。
念願のチョアジャケットは1ヶ月後に完成予定。これは待ちきれません!
シャツの仕立て職人が仕立てる、ビスポークのチョアジャケット、いかがでしたでしょうか。ビスポークスーツ、ビスポークシューズに続いて、自分の中で潜在的に温めていた要望を、職人の方の力で具現化していただく感動を味わうことができました。ビスポーク、止められません。
池田さんには私のお願いしたチョアジャケットとドレスシャツの納品とあわせて、12月にトランクショーにお越しいただけることになりました!
ドレスシャツ、カジュアルシャツに加えて、池田さんの定番アイテムであるファティーグジャケット、サファリジャケットがご注文いただけます。もちろん弊店オリジナルのチョアジャケットもご注文いただけます。
また私のように「こんなシャツがオーダーできるかな」「こんな軽快なジャケットが欲しいんだけど、作れるかな」という方もぜひご相談ください。ドレスだけでなく、カジュアルやワーク、ミリタリーにも精通した池田さん。オンオフ兼用できるようなアイテムをビスポークで依頼するのはいかがでしょうか。まずはお気軽にお問い合わせをいただけますと幸いです。
RYO IKEDA Bespoke Shirt Trunk Show