「ビスポークライン」受注会レポート
定期的に開催している、ビスポークライン受注会の模様をご紹介させて頂きます。型紙を一から引いて作成するフルオーダーならではの、特別な仕様のジャケットやコート。お客様それぞれのスタイルが表現された、オリジナルのオーダーの数々をご覧下さいませ。
フィッティングを待つ、ビスポークの洋服たち。お客様のフィッティングの模様をご紹介させて頂きます。
U様 ピンチバック・ジャケット&ベスト(仮縫い)
MTM(メイドトゥメジャー)ではこれまで沢山のご注文を頂いているU様。某雑誌でご覧になられたビターレ・バルべリス・カノニコ社は「BEAUSOLEIL(ボー・ソレイユ)」のソラーロ(サンクロス)で何か作りたいなと構想を頂き、せっかくだからMTMではオーダーできないディテールでこの生地を料理しようと、初のビスポークジャケット&ベストオーダーに至りました。
採用したのは、1930年代に流行したスポーツジャケットのディテール。前から見るとノーマルなジャケットに見えますが、背中にバックベルト&プリーツが配されています。これは「ピンチバック・ジャケット」または「サニングデール・ジャケット」などと呼ばれます。背中にアクセントを入れるのは、男性女性を問わず、伝統的に用いられるファッションの常套手段ですね。
襟付きベストをフィッティング。
ジャケットは、一番上までボタンが止められる仕様に。首元のフィッティングも確認。
バックプリーツは入れ方を変更し、パッチポケットもサイズを見直しました。次回中本縫いが楽しみです。
O様 グレート・コート(中本縫い)
「Greatcoat(グレートコート)」とは、第一次世界大戦時より着られる、将校のためのミリタリーコートの一種。オリジナルはヘビーなメルトンを使用し、メタルボタンにベルテッドの少々いかめしい雰囲気ですが、O様のグレートコートは、ロロ・ピアーナ社の「Pecora Nera(ペコラネラ)」を使用して、ソフトにエレガントに。シルエットもオーバーサイズのたっぷりとしたAラインで、絶妙なアレンジのグレート・コートとなっております。
中本縫いですので、上襟や袖付以外は仕上がっております。ミリタリーコートならではの、ミシンステッチが効いています。
袖の落ち方や、裾に向かって広がる前後のボリュームの出方も、ばっちり!オーバーサイズなのにルーズにならないのが、ビスポークならでは。
ピーコートなどに見られるリーファーカラー。折り返して着ても、上まで止めて着ても着られる仕様。閉めた時に、開きすぎないか、窮屈で無いか、しっかりと確認。肩・袖の落ち具合がたまりません。
背中には長いインバーテッドプリーツ。バックスタイルのアクセントとして、プリーツの開き止まりの三角ステッチを大きくすることになりました。プリーツに隠れていますが、トレンチコートなど軍モノのコートに見られる、「あおり止め」というタブも付けています。いよいよ、次回完成。楽しみです!
O様 ジャケット(中本縫い)
O様はビスピークジャケットのリピートオーダーを頂きました。前回のジャケットも大変ご愛用頂いておりますが、2着目はその上で大幅なアレンジ。全くの別物に仕上がっております。生地はドラッパーズの「オパリス」のブラウン。メランジ調の表情が楽しく、ほぼ無地ながらとても饒舌な生地です。
前回はナポリの仕立てに見られる、フロントダーツが裾まで貫通した仕様を採用していましたが、今回はフロントダーツが無く、袖に隠れる様に脇に斜めにダーツの入った、フィレンツェの仕立てに見られるスタイル。プレーンでリラックスした見た目が魅力的な分、バストにボリュームを出すのが難しい仕様ですが、仕立て職人の小島氏のノウハウを結集した結果、素晴らしい胸のボリュームが出ています。
フロントカットや、ゴージラインもアレンジ。
怒り肩が強いO様ですが、撫で肩の丸い肩のラインがお好み。お客様の体型に合わせると間違いなく怒り肩のジャケットになるので、とても難しいリクエストですが、そこはビスポーク。今回は上襟の「のぼり」を高く、肩をドロップショルダー気味にすることで、肩傾斜はご体型に合わせつつ、撫で肩に見える工夫をしています。かなりの効果が実証されました。
O様にも今回のディテールやサイジングを大変気に入って頂き、「次のジャケットを作る時も、もうこのままで良いです。」と嬉しいお言葉を頂きました。完成をお楽しみになさって下さい!
W様 ダブルチェスターコート(仮縫い)
W様は以前ビスポークスーツをお仕立てさせて頂いておりますが、今回はダブルチェスターコートをビスポークで。生地はピアチェンツァの"DUNES"(デューンズ)のベイビーキャメルヘア。しっとりと光沢のあるミッドナイトブルーが、ダークスーツを隙無く着こなされるW様のスタイルに、この上なく合います。
シーチングでバックベルトの位置を確認。
フィッティングの確認に加え、ポケット位置、ボタン位置も、シーチングで作ったダミーを動かしながら確認します。ここは超アナログに、遠目に拝見して確認する、観察力とバランス感覚が必要とされるプロセス。微調整を加えながらばっちり確認させて頂き、次回中本縫いへ進みます。
ビスポークが弊店のレギュラーメニューとして浸透してきて、大変嬉しいです。改めて完成品をご紹介して参りますので、どうぞ宜しくお願い致します。