念願のビスポーク「ステンカラーコート」後編

hayashi
店主
林 倫広

楽しみにしていたビスポークステンカラーコートが完成!通常は完成してすぐに、きれいな状態で着用して撮影するのですが、今回はあえて何回か着て馴染ませてから撮影しております。そんな訳で、すでに良い味が出てきていると思うので、ぜひご覧下さいませ。

前編ではビスポークステンカラーコートをオーダーするに至った経緯や、ディテールをご紹介させて頂きました。こちらの後編では、実際に着た時の見え方や着心地などをお話させて頂きます。

シルエット

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ボタンを開けて着た様子。裾に向かってゆるやかに広がるAラインです。丈は膝がすっぽりと隠れる、膝下ロング丈です。袖丈も、洗い縮みや、袖口が擦り切れた時に詰めて直す事を考慮して、最大限長くしています。

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こだわりのスプリットラグラン。前から見るとセットインスリーブにしか見えません。ドレッシーになりすぎない様、あえて肩は大きめで少し落とす様にしています。

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ボタンを閉めた様子。比翼仕立て(ボタンが隠れる仕様)なので、すごくすっきりと見えます。

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このシルエットが理想としていたものです!前後にもAラインが出る様に、仕立ててもらいました。胸周りはフィットして、裾に向かって前と後ろに広がっている様子がお分かり頂けるかと思います。

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ボタンを開けると、さらにシルエットにボリュームが生まれます。お天気が良い日は、ボタン全快で裾を風になびかせます。

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このポケットに手を入れた時に、袖がクシュクシュと溜まる感じが好きです。袖もあえて、太くしてもらいました。

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珍しい台形のタブ。後でご紹介する、襟のタブとデザインを合わせています。元々は袖口を絞ることで、袖口からの雨風の侵入を防ぐ目的のパーツ。

手縫いのステッチとボタンホールに、軍モノのプラボタンで、なかなか存在感のある袖口となっています。

後ろ身頃

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後ろ身頃も至ってシンプル。ドレープ感と、背中心のステッチが見どころです。このコートに限っては、背中の座った時につくシワも、気にせずに着る事に決めています。袖のシワ、背中のシワなど、着ている中で生まれる自然なシワは大歓迎です。

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背中のボリューム、そしてセンターベントが開かずにストンと落ちる様子など、後ろからの見た目も、文句なしです。こう見ると、生地も良い色をしています。光によって黒に見えたり、ネイビーに見えたり、ダークながら表情豊かな生地です。

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スプリットラグランなので、後ろから見るとこの通り、ラグランスリーブです。

ラグランの縫い目は手縫いで「はしごまつり」という縫い方がされており、縫い目にあえて遊びを作る事で、腕の動きにしっかりと追従してくれます。

ステンカラー

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「ステンカラー」と、襟の名前がコートの名前になっているだけに、襟はとても大切ですね。ユニークな襟をご覧下さい。

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最大の特徴はこのタブ。襟と一続きで、一枚の布で作られています。台形なのもチャーミング。

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タブは襟の下のボタンで止めて、収納する事ができます。この開きの角度が狭く小ぶりの襟、本当に好きです。

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先ほどの台形タブはこの様に収納されています。

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襟を立てると、レールステッチが姿を表します。

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こんなに襟を立てる事は普段無いですが、無骨な感じで良いですね。

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タブを顎の下で止めたところ。首が窮屈でなく、顎が収まる様に仕立てられています。何も無い時にこの状態で歩いていたらちょっと怪しいので、ものすごい雨風が強い日などチャンスがあれば、この最強の状態で歩いてみたいです笑。

感想

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肝腎の着心地の感想を。簡単に申し上げるなら、「軽い。柔らかい。快適。」です。

コットンコートというと、ウールまで行かないにしてもナイロン 系と比べて「重そう」と心配される方もいらっしゃると思います。こちらのコートは薄手で耐久性の高い生地を使用した上に、芯地や裏地を極力省いた作りなので、着た時に軽いのは当然ながら、手に持ってもとても軽いです。しばらく使ってみて思いましたが、さっと着脱できるたっぷりとしたシルエットの上に、脱いで手に持っても軽いので、電車や商業施設の出入りの際に脱いだり着たりのストレスが本当に無いです。かさばらないので、いざとなればクルクルと丸めてコンパクトにバッグに放り込む事も可能です。

柔らかさは、何より生地の影響が大きいです。今回採用したオルメテックスは「ラグジュアリー・ギャバジン」と呼ばれるだけに、丈夫な生地でありながら、しっとりとした光沢があり、まるで上質なシャツ生地の様に、とてもしなやかなのが特徴です。それによって着た時にすんなりと体に沿い、動きを邪魔しませんし、ドレープ感が素晴らしいです。

快適というのは、生地と仕立ての相互作用によるものです。こちらのビスポークコートは、上質なコットン生地の特性を活かす様に、できるだけ芯地裏地を省いたアンコンで仕立てていますので、通気性が良く、湿気がこもりにくいです。上述した軽さ、柔らかさとも相まって、盛夏を除いては着られると思いました。私の場合、春夏は5月いっぱい(6月は梅雨のレインコートとして着用)、秋は9月くらいから着てしまおうと考えています。通気性はありつつ、十分な撥水性も備えています。ゴアテックスの様に弾く訳ではありませんが、雨でかなり濡れても、中まで染み込む事はありませんでした。

このステンカラーコートが完成して、ますますビスポーク、そして服が好きになりました。「また一つ、人生に寄り添ってくれる、理想の服を手に入れた」という手応えがあります。完成してから気温さえ許せば毎日着ていたので、すっかり体と気持ちに馴染み、玄関でサンダルをつっかける様に、何も考えずに手が伸びる様になりました。旅行や出張にも連れていきました。そんな訳で、着ていない時にも、このコートがハンガーにかかっているのを見ると、安らぎを感じます。

なぜこのコートについつい手が伸びてしまうのか。着心地の良さや、シンプルゆえにどんな着こなしにも合う汎用性の高さ、なども挙げられますが、一番は「育てる楽しみ」ではないかと思います。もしこのコートが着れば着るほど痛んでしまうのなら、気に入っている分怖くて着れなくなってしまいますが、このコートは着てクタクタになればなるほど格好良くなるコンセプトで仕立てられた服です。その点ではジーンズや革靴に近い感覚の服です。ですから、特に悪天候の日などは、しめしめと思いながら、このコートに袖を通しますし、旅行や出張など何が起きるか分かない時にも、このコートがお守りの様に頼りになります。

これからも大切にしつつ、着られるだけ着て育てていきます。果たして、5年後、10年後、20年後にどんな表情になっているのか。一緒に良い歳を重ねていきたい1着です。

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念願のビスポーク「ステンカラーコート」前編 ビスポークシューズ「フルブローグ(ウィングチップ)」
Posted by Tomohiro Hayashi
林 倫広

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